アウトプットするためのブログ

本や映画の要約・感想と、生活の中で思ったことを書いています。

苦役列車 西村賢太

f:id:ztnn:20191209162624j:plain


僕は普段小説を読まないのだけど、安くて想像力を鍛えることが出来そうな娯楽だなと感じて、本書を買ってみた。

youtubeやネットニュースを見ても時間は潰せるのだけど、それらは頭を使わない。

たまには頭を使う楽しみを感じたい。

僕の中で一番好きな小説は村上春樹の「風の歌を聴け」で、これが面白さの基準になっている。

西村賢太という作家については、なんだか怖そうな人だという印象だ。

口元は笑っていても、目は笑っていない…ような。

彼は私小説家というあまり聞き慣れないジャンルの小説家だ。私小説とは実体験に基づく小説のことだそうだ。(すごい!)

 

あらすじ

犯罪者の父親を持ち、貧困な家庭で生まれた貫多は中卒で日雇い労働に従事し、親元を離れて1人で暮らしている。

ある日、貫多は日雇いの現場で同い年の日下部という専門学生と出会い、意気投合する。

日下部は貫多にとって初めて出来た友人だった。

2人は職場では常に行動を共にし、プライベートでもほど仲を深めた。

しかし、徐々に貫多は日下部と自身との間に境遇の差を認識するようになり、日下部に嫉妬や劣等感を感じはじめる。

次第に貫多は日下部に金を無心し、酒の席では彼に暴言を吐くようになった。

そうした行為を重ねるうちに、日下部は貫多と距離を置きはじめる。

やがて日下部は学業に専念するため日雇いの仕事を辞め、貫多と完全に疎遠に。

貫多は友人を失い、再び孤独になった。

月日が経ち、日下部は結婚して家庭を持ち郵便局員に就職していた。

貫多は、依然として日雇い現場で小銭を稼ぎ、孤独なその日暮らしを続けている。

 

感想

登場人物が少なくいので、あまり頭を使わなくて良い。

物語に劇的な展開は最後まで起こらない。

文体は独特で、普段は使わないような単語が頻出する。

「虚室」「人足」「黽勉」「買淫」など。

しかし、単語の意味は前後の文脈で十分理解できる。

 本作は主人公の突飛な人間性と、不幸を味わう作品だ。

 貫多は世間一般から見て「道を外れた」突飛な性格の人間で、それがとても魅力的に映る。読んでいると「自分とは違った種類の生き物」を観察するような気持ちになる。それが面白い。

 僕たちは一般的に、安定した生活や、無難な生き方を求めている。

だからこそ、フィクションの世界の登場人物ぐらいには思いっきり道を外れていて欲しいし、「不幸」を見たい。

落ちていく主人公というのは魅力的だから。

僕はネガティブなフィクションには心の浄化作用があると信じている。

貫多は小説の中でしっかりと「普通ではない生き方」をしていて「不幸」だ。

これらを擬似的に体験できるのは、フィクションの醍醐味でもある。

 苦役列車は創作物に「突飛な人間性を持つ登場人物」と「不幸」を求める人にお勧めできる。